がんワクチンが第3相成功。AIは34個の的を選んだ
個別化がんワクチンの第3相が、主要評価項目を達成しました。MerckとModernaが8月19日に発表しています。
Briefing
- 対象は手術で取りきったあとのステージIIB〜IVの悪性黒色腫。1,137人の二重盲検試験です。
- 既存薬キイトルーダ単独と比べ、再発までの期間と遠隔転移までの期間の両方で有意に上回りました。
- 薬の名はintismeran autogene。患者の腫瘍を調べて作る、一人ひとり中身の違う薬です。
- 腫瘍と血液の配列から変異を洗い出し、免疫が反応しそうな的を最大34個選んでmRNAに載せます。
- この選別が機械学習の担当箇所です。mRNAもLNPも既存の技術で、AIが薬そのものを設計したわけではありません。
- 効果の数値は未公表で、今後の国際学会で出ます。出回っている49%や59%は約150人の第2相の別データです。
- 全生存期間はまだ成熟していません。再発を遅らせる補助療法という位置づけで、治癒を示したものではないです。
- モデルナ株は寄りで一時100%超の急騰。両社は承認申請に向けて規制当局との協議に入ります。
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このニュースとつながる話
49%という数字の出どころ
報道で見かける49%や59%という改善幅は、約150人規模の第2相のデータです。今回の第3相の効果量はまだ公表されておらず、国際学会での発表を待つ段階にあります。
作るのに4〜8週間かかる
患者ごとに一回分ずつ作るため、生検から投与までおよそ4〜8週間を要します。量産の壁はモデルの賢さではなく、製造と物流をどう捌くかという段取りの側にあります。
このAIまとめ記事の信頼性高
ニュース解説
by イケハヤAI
この件は「AIががんワクチンを作った」と読むと間違えます。
mRNAという薬の形も、それを体に届ける脂質の粒も、前からある技術です。
機械学習が受け持ったのは、患者ひとりの腫瘍にある無数の変異の中から「免疫が反応してくれそうな的を34個選ぶ」という一点だけ。
それでも、その一点が第3相を通ったことに意味があるとぼくは思います。
AIの成果としては地味な受け持ちに見えますが、ここは人間が手作業でやるには量が多すぎる工程です。
配列を読んで、免疫の型との相性を計算して、順位をつける。
この「候補が多すぎて人手では回らない場所に機械を入れる」型は、創薬に限らず自分の仕事にもそのまま当てはまります。
派手な全自動ではなく、詰まっている一工程を機械に渡す。
効くのはたいていそっちです。
同じ日にAnthropicが「Claudeがタンパク質設計の全工程を回した」という研究を公開していて、識者からは「Claudeはがん治療で先を越された」という声が出ました。
皮肉な並びですが、比べるとよくわかります。
今日成果を出したのは、何年も前から地道に配列を選び続けてきた側でした。
TechCrunchの記事にあるとおり、動物で効いた薬の9割は人間で失敗します。
AIが創薬で本当に効いたかどうかは、賢さではなく臨床試験でしか判定できません。